第33回 自己肯定感の低い日本の若者 – 褒めるカナダ・叱る日本|カエデの多言語はぐくみ通信

第33回 自己肯定感の低い日本の若者 – 褒めるカナダ・叱る日本|カエデの多言語はぐくみ通信

 「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」は日本を含む韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの7カ国の13歳~29歳の若者を対象とした5年毎の意識調査で、一番最近の調査は2018年でした。人生観・国家・社会・ボランティア・職業・学校・家庭についての設問がありますが、日本の若者の自己肯定感の低さが目立ちます。なぜ日本の若者の自己肯定感はこれほど低いのでしょうか。

*著作権及び紙面の関係上グラフをここに掲載できませんが、調査結果は下にある内閣府のサイトをご覧ください。

自信のない日本の若者

 「自分自身に満足している」という質問についは、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」を合わせても日本は45%です。日本を除く6か国はすべて70~80%台で日本の低さが目立ちます。「自分には長所がある」は62%で、これも参加7か国で最低でした。「自分は役に立たないと強く感じる」では日本の若者は52%でしたが、これはアメリカや英国と大差ありません。ということは、自分が役に立つ人間かどうかは自己肯定感とはあまり関係がないようです。私の住むカナダはアメリカと文化的に似ていますが、特にカナダ人が能力や人格において日本人より優れているとは思いませんが、彼らの自己肯定感は明らかに日本人より高いと感じます。

 「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」日本の若者は46%でこれも最低です。これは、人からどう思われるかがとても気になり、反論されると自分を全否定されたように感じる日本人の特性に関係すると思います。反論が怖いから自分の意見を言わない、または言えない日本人が多いと感じます。社会問題に対する関心も薄いので、これでは権力があり意見を言える人が自分の良いように社会を作り政治を進めてしまいます。

褒めるカナダ・叱る日本

 「自分の親から愛されていると思う」は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせると79%ですが、「そう思う」と断定しているのは35%で他国と比べて最低です。私は日本人の親子関係は希薄だと感じます。私のカナダ人の夫は母親に週3回は電話をしますが、日本では、独立した子どもが親に会うのは年に数回だったり、親に滅多に連絡しない人も多いのは、大人になるまでに親から十分な愛情表現をしてもらえなかったことの表れではないかと思います。

 日本とカナダで大きく違うのが「叱る日本」と「褒めるカナダ」の子育てです。日本の親は子どものできないところに目が行きがちで叱ることで矯正しようとします。海外に出て初めて人に褒められた人は多いのではないでしょうか。私は日本では親からも周りからもダメ出しばかりだったのに、初めての海外(アメリカ)では頻繁に褒められることにたいへん驚きました。日本人はとにかく人を褒めません。これで若者に自己肯定感を高く持てというのは無理な気がします。

 カナダではとにかく自分の子どもを褒めます。学芸会でどんなに出来が悪くても親はめいっぱいの賛辞を子どもに送ります。叱らなさすぎや甘やかしすぎで子育てを失敗したカナダ人も知っていますが、日本のように褒めなさすぎと否定し過ぎも自己肯定感の低さというデメリットに表れています。

若者に漂う閉塞感

 「自国の将来は明るいと思う」は31%で、将来に対する希望が持てない日本の若者像を表しています。子ども時代は勉強や受験に追われ成績や順位で自分の価値を決められ、社会人になると協調性や調和、他人に迷惑をかけないことに気を使い、賃金は上がらず長時間労働を強いられ、一度レールを外れるとやり直しが難しい日本。悲しいかな15歳~34歳の若者の死因の1位が自殺というのはG7で日本だけです。

 私の日本の姪は新就職氷河期世代で、就職に関して明るい話題がありませんでした。また、家庭内の事情もありいつも暗い顔をしているので、私が一時帰国の毎にカナダにワーキングホリデーで来ることを勧めました。将来のことはわからないけれど、1年だけでも海外に出たら自信を取り戻せるのではないかと思ったからです。姪はカナダに来ると、持ち前の勤勉さと頭の良さで雇い主から信用を得て永住権も取れることになり、今では笑顔が眩しいくらい明るくなりました。

自己肯定感はまずは家庭から

 親から愛されていると感じる子どもほど自己肯定感が高いそうです。世間が何と言おうとも子どもの味方になり、日本社会に閉塞感があろうとも明るい未来を見せ、将来挫折を経験してもきっとやり直せると子どもに自信を持たせることができるのは親しかいません。私の日本の友人に「勉強のことは分からないからとにかく子どもを褒めまくった」という人がいます。彼女の子どもは2人とも人のために働きたいと弁護士になりました。子どもを信じて褒めることの威力を教えてくれる話です。さあ、今日からお子さんをたっぷり褒めてあげてください。

参考:「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度)」内閣府
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html

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