第30回 日本のセクハラ文化から子どもを守るには|カエデの多言語はぐくみ通信

第30回  日本のセクハラ文化から子どもを守るには|カエデの多言語はぐくみ通信

 職場でのセクハラやパワハラを告発する女性たちが増えてきました。SNSで個人が発信できるようになったからでしょう。今まで口封じをされていた女性たちがパンドラの箱を開けたようです。

日本でも告発を始めた被害者たち

 ハリウッド大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン事件から端を発した#MeToo運動は日本ではあまり盛り上がらなかったようです。なぜなら、日本では性暴力を告発した女性へのバッシングが凄まじく、2次や3次被害に怯える女性たちは泣き寝入りするしかないからです。ジャーナリストの伊藤詩織さんがレイプを訴えても、ハニートラップだと叩く女性議員がいたことには本当に驚きました。

 それでも少しずつ声を上げる女性が出てきています。最近では日本映画界の複数の男性監督によるセクハラやパワハラが女優たちによって告発され、22歳の元女性自衛官が自衛隊内部で日常的に横行している醜いセクハラや暴行を公にし、元舞妓が16歳で酒を飲まされたり混浴を強要されたという児童福祉法違反と性犯罪のダブルパンチともいえる伝統の裏の顔を晒しました。しかし、それら表に出てきたのはきっと氷山の一角でしかないのでしょう。

 軍隊内でのセクハラは私の住むカナダでも横行していて、近年上官による過去の性暴力やパワハラ問題が明るみに出てきています。上官たちの醜い行いが次々に暴露され裁判になろうとしています。きっと何十年も蓋をしてきたのでしょうが、昨年、カナダ国防大臣が被害者に謝罪しました。

無知な一般人

 私は数年前に日本へ帰国した時に、祇園の舞妓に会えるというイベントに家族で参加しました。その時の舞妓は18歳。負けたらお酒を飲むという遊びをしましたが、未成年で酒は飲めないということで、勝っても負けても客が酒を飲みました。私は、舞妓たちが未成年ながら夜に酒の席で仕事をすることに少し違和感を覚えながらも、置屋の大人に守られながら日本の伝統文化を守っていると信じていました。全ての置屋ではないにしろ、少女に飲酒をさせたり、彼女たちを性的に搾取する大人がいる可能性があると思わなかった自分の無知に呆れます。

 誰も声を上げないから、規律のある軍隊だから、伝統ある世界だから問題はないだろうという世間一般の思い込みと、中の責任者たちが問題を隠し通してきたことで、きっとたくさんの隠れた被害者がいることでしょう。そして内部の責任者たちは、今後も隠し通せるだろうと思っていたのでしょう。今まで誰も開けなかった、または開けようとしても阻止され続けたパンドラの箱を、女性たちが自らの勇気で開けようとしているのは賞賛に値します。

 まだ違法行為が確定したわけではありませんが、私は勇気を出して声を上げた人たちをサポートしたいと思いますし、卑劣な行為をした人たちがしっかり裁かれることを願っています。もし、声を上げた女性(または男性)をサポートしないなら、中傷もしないで欲しいと思います。

どうしたら子どもたちを守れるのか

 私は日本の性差別、セクハラやパワハラに嫌気がさして、娘に同じ経験をさせたくないと考え、子どもたちが幼い頃にカナダに移住しました。カナダは完璧ではないにしろ、日本より性差別やセクハラに関してはやってはいけない問題と捉えていています。また、子どもの安全に神経をとがらせていて、子どもが危険な目に遭うと親が罰せられます。小学校低学年の子どもを1人で留守番させるだけでも罪になります。

 ただ、日本で成長しなければならない子どもたちが、男の子でも女の子でも、今後も大人たちの性やパワハラの対象となることが気の毒でなりません。女優や自衛官、舞妓たちのように、性被害やパワハラを受けて憧れていた仕事を辞めることがないように、膿を出し切り本気で改革がされることを強く望みます。

 日本は性被害に遭いやすい国です。私は若い頃、日本で何度も痴漢行為に遭っていますし、通勤や通学の電車などで痴漢されたことがない女性はいないのではないでしょうか。それなのに、小学生の子どもが1人でラッシュ時に電車で通学などは異常としか言いようがないです。

親ができることとは

 子どもが性被害に遭わないように親はもちろん気を付けていると思います。しかし、上でも書いたように、伝統芸能の世界だから安心、日本は安全な国だから大丈夫、今まで問題なくやってきたことだから今更変えられない、と思考停止していないか、再度検証してみることは大事です。

 私は他のカナダの親に比べても、過保護気味に娘の安全には気を使っていました。イベントがあっても高校生の時の門限は9時、大学生の前半は11時でした。カナダは16歳で運転免許が取れますが、友達の車に乗せてもらう時は運転者の年齢を聞いていました。娘は文句たらたらでしたが、自分が悪者になってもいいから後悔したくなかったからです。

 成長して社会に巣立った子どもたちが、もし性暴力やセクハラに遭遇した時に、どのように行動すべきかも親子で話し合っておいたほうがいいでしょう。性暴力に遭いそうになったら先のことなど考えなくてもいいからとにかく逃げる、もし被害に遭ってしまったらすぐに警察、親や信頼する年長者に連絡する、などです。そして、最も大事なことは、性被害に遭った自分を恥じる必要はまったくないと教えておくことだと思います。

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