日本が同性婚合法化に踏み切るべき理由|カナダで暮らす私たちが考える日本の『LGBTQ+』社会確立への提言|特集 カナダ「LGBTQ+」

日本が同性婚合法化に踏み切るべき理由|カナダで暮らす私たちが考える日本の『LGBTQ+』社会確立への提言|特集 カナダ「LGBTQ+」

カナダで暮らす私たちが考える日本の『LGBTQ+』社会確立への提言

 結婚や家族の形は人それぞれだが、異性カップルに当たり前に付与されている権利が同性カップルに付与されないのは、社会が一部の人権を無視し続けてきたという事実であり、国はこの不平等に働きかける必要性がある。

 同性カップルが関係性を公的に認められないために直面する困難は数多くあり、公的に認められることの意義は多い。例として、同性カップルの場合は配偶者控除など税制面での優遇がされず、共に築いた財産があったとしても遺言を残しておかない場合、遺産の法定相続人になれなかったりするなど、様々な社会的保障が受けられない。また、同性同士は家族として扱われないため、病院でICUに入った時に面会を断られるケースや家族でないと死に目に会えないなど緊急時の大きなデメリットの恐れがあり得る。また、相手が外国人の場合は日本に滞在する資格はおりず、パートナーが産んだ子供をカップルで共に育てたとしても、親権者になることはできない。

 ドイツで同性のパートナーのティナ・バウマンさんと同性婚をしている中島愛さんは、日本で性的指向を明かすことは「追放されるようなもの」だとBBCに語っている。

「(日本で カミングアウトすることは)人生の多くの側面に影響する。例えば、同性カップルとして家を借りようとしても拒否されるかもしれない。あるいは、不動産物件を購入するためのローンを組むこともできないかもしれない」「ほとんどあらゆる状況で、問題にぶつかる」と中島さんはBBCに明かしている。パートナーのバウマンさんは、「 日本での性役割はもっと伝統的で、女性は結婚して出産するものと期待されている。多くの場合、出産すれば仕事を辞めるものだという思い込みさえある」と言及し、同性愛者への差別と女性軽視が複雑に絡み合う日本の文化に関する問題意識を述べた。

婚姻の平等の実現に向け、全国にて「結婚の自由をすべての人に」起訴が開始

 今年2月14日、バレンタイン・デーの日に13組の同性カップルが同性婚を認めない民法や戸籍法は憲法が保障する結婚の自由を侵害しているとして、東京・札幌・大阪・名古屋で一斉に起訴を起こした。現在、日本政府は同性同士の婚姻届出を不受理としており、政府はこれまで一貫して日本国憲法第24条第1項の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」するという定めに反するとしてきた。しかし、現在では政府が憲法違反を理由にあげることはなく、民法・戸籍法上の文言を理由に同性間の婚姻届出は不適法であるとされている。

 原告団のカップル達は、「相続する権利が全く関係ない友人という関係になってしまう」と法改正の必要性を訴えており、また日常生活でも所得税の配偶者控除や医療費控除などの面で、本来結婚していれば受けられるはずの社会保障でも不利益があると訴えている。弁護団は性的マイノリティの人権擁護のために活動してきた全国の弁護士によって結成されており、今回の起訴は日本で同性婚が認められていない法律の違憲性を問う、日本で初めての起訴である。今回の起訴は、日本における性的マイノリティの歴史を揺るがす出来事と言えるだろう。

 ハフィントンポストによると、起訴を起こしたカップルの一組である古積健さんと相場謙治さんは、今年1月4日に川越市役所にて婚姻届を出し、市役所の窓口担当者は「不受理にする予定」と説明されたそうだ。この不受理の証明書は裁判の証拠として提出されることになった。二人は友達の紹介で2008年に出会い、付き合って10年余りだそう。相場氏は「他のゲイカップル、レズビアンカップルで人前に立っているのは少ない。本当は声をあげたいのにできない人がいる。すでにカミングアウトしている自分たちにしかできないことがあるなら、力になりたい。色んな反応があると思うし、バッシングもあるかもしれない。でも誰かが動かないと、実態は動いていかない。盾になって進んでいけるなら役に立ちたい」とハフィントンポストに思いを語った。またパートナーの古積さんは、「不受理を受理にする戦いが、これから始まるんだなと思いました」と語った。

 また、ニュースサイトLITERAによると、12月8日放送『news zero』(日本テレビ)の同性婚特集で紹介された七崎良輔さんは、同じく2015年に役所へ婚姻届を提出し、婚姻届が受理されることはなかった。それを承知で届け出を提出したのは「当たり前のことを当たり前にしたい」という思いがあったからだそうだ。「自分がゲイだっていうことに気づいたときに、結婚がこの先ないんだと。自分にはもう結婚できる未来がないんだと思ったときに、足元が崩れていくような感じがして。今後まわりの友だちはみんな結婚していくだろうけど、自分だけはないんだろうな」と七崎さんは番組にて語り、「愛する人と結婚して生きていく」という当たり前の権利が国から与えられていないことに対する絶望感を語った。また、亮介さんは「なにか特別なプラスアルファを求めているわけではなくて、ただ単に平等というところの話です」と性的少数者が人生の様々な局面で直面する不平等を指摘した(ニュースサイトLITERAより)。

 今年4月15日には東京地裁での第1回口頭弁論があり、国側は訴えの棄却を求め「請求の棄却を求める」などと争う姿勢を見せているが、今後は名古屋、大阪でも裁判が行われる予定となっている。代表理事で弁護士の寺原真希子氏は、一般社団法人Marriage For All Japanの公式ウェブサイトにて、「地方裁判所、高等裁判所、そして最高裁判所の判決を得るまでには数年がかかる見通し」だと述べている。この訴訟を契機に世間の関心と理解が高まり、裁判所の判決が出る前に国会が同性カップルが結婚できるように法整備を進めることになれば、より早く同性婚(婚姻の平等)が実現できると寺原氏は言及している。