移民の道を閉ざされた家族|カナダで永住権! トロント発信の移民・結婚・就労ビザ情報

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  2021年に入ってから、2件の特殊な案件を扱いました。双方共に、カナダ移民法の全く同じ条項が該当するケースでした。その条項がもたらす致命的な結果についてお客様が知らなかった、ということが原因で、そのお客様がカナダにおいて移民申請をする道が完全に閉ざされてしまった、という悪夢のような結果を導いた案件でした。カナダの日系コミュニティーにて、同様の状況に陥ってしまう方が一人でも増えないよう、今月はこの移民法の条項についてお話します。

カップルとして同棲し、Common-lawになること

 TORJAの読者の方でも、「彼氏・彼女としてカナダでお付き合いし始めてから暫く経ってきたので、そろそろ同棲しようと思っている」方はいらっしゃるのではないでしょうか。晴れて同棲し、様々な事をカップルとして乗り越えていくうちに、結婚にはまだ早いが、Common-law(事実婚)となるという選択肢が二人の間で出てきたとします。二人のうちのどちらかがカナダ国籍、或いはPR保持者であればその方がSponsorとなり、Sponsorshipカテゴリーにて相手の移民申請をすることが可能です。

 それでは二人共外国籍で、このままカナダに住み続けたい場合はどうでしょう。この場合、必然的に二人のうちのどちらかが個人移民申請枠の申請条件を満たしているか否か、ということを模索されるのではないかと思います。どちらかが申請条件を満たしており、且つ二人の関係が移民法におけるCommon-lawの定義を満たしていれば、もう一人はその申請に配偶者として含まれることとなります。

自覚が無くても

 ここで問題は、「同棲してもう1年以上経つけれど、まだ自分たちのことはCommon-lawとは考えていないし、相手に借りは作りたくないから自分の移民申請は自分でするよ」という場合で、後々個人移民申請の条件を自分は満たせないと認識し、既にPRを取得済みの相手がSponsorとしてSponsorshipカテゴリーで移民申請をすることとなった場合です。

 1999年にカナダ最高裁判所は「Common-law」の定義を詳しく定めました。その内容は「二人が1年以上同棲しており、性的関係にあるということだけではなく、お互いの間に一定のレベルの愛情があるかということである。そのレベルを調べるためには下記7項目を二人の現状と照らし合わせるべきである」というものでした。

  1. 同居しているか(例:寝起きを共にしているかなど)
  2. 性的で、個人的な態度をとっているか(例:恋人への貞節、お互いへの気持ちなど)
  3. 尽くし、助け合っているか(例:家事を分担しているなど)
  4. 公で自分たちをどう表しているか(例:家族や友人の前でカップルとして態度を示しているかなど)
  5. 経済的なサポート(例:金銭的に助け合っているか、資産を共有しているかなど)
  6. 子供(例:子供に対する態度や接し方など)
  7. 公的にカップルとして認識されているか

 つまり上記において概ね該当しており、1年以上同棲している場合は、本人たちに自覚がなくても、そして本人たちが正式にCommon-lawであると法的に書面で記していなくても、既にCommon-lawとなっている場合があることを知っておいて下さい。

IRPR s.117(9)(d)

 移民法に関わる仕事に就いている者であれば、「IRPR s.117(9)(d)該当の案件」ということを知った瞬間、一気に顔が曇ります。この条項が示す内容は、以下になります。

 (Sponsorshipの移民申請カテゴリーにおいて)Sponsor自身が以前に移民申請をし、PRステータスを取得したにも関わらず、その当時相手が既にSponsorの家族(Common-law含む)であることを明記しておらず、且つ相手が健康診断や犯罪歴のチェックを受けなかった場合、今後はその相手は家族とみなされない。

 つまり、本人たちが「まだCommon-lawではない」と思っていた時点で一人が個人移民申請をし、PRを取得し、その後二人の関係が深まり「さぁ私がPR保持者だからSponsorとなってあなたの移民申請をしよう」と思っても、既にその方はカナダにおいてSponsorshipカテゴリーによる移民申請の資格を永遠に剥奪されていることになります。

 この条項は「存在自体を知らなかった」「私たちはCommon-lawだと認識がなかった」では済まされません。過去カナダの裁判所において、沢山のケースがこの条項に関する決断を下していますが、どれも大変厳しい結果です。このようなことにならないよう、軽い気持ちで移民申請はせず、必ず弁護士や政府公認移民コンサルタントに相談されることをお勧め致します。