カナダ各地でアジア人に対するヘイトクライムの増加 新型コロナウイルス感染拡大と共に

カナダ各地でアジア人に対するヘイトクライムの増加 新型コロナウイルス感染拡大と共に

カナダ現地メディアが報じたトロントで発生したアジア人差別

世界中で新型コロナウイルスに伴ったアジア人に対する人種差別が起きているが、カナダも例外ではない。現地メディアが報じたところによると、トロントの緊急救命室で正看護師として働くキャサリン・チャン氏は、息抜きがてらルームメイトとダウンタウンに散歩に出た時に遭った人種差別的体験について語った。

それは散歩中に食事を取ろうとレストランの外でオーダー待ちをしていた時、60代の女性が二人に近づき急に叫んできた後、持っていた傘で二人を叩いてきたという。そしてその女性は矛先をチャン氏に向け人種的中傷を浴びせながら“自分の国に帰れ”と言い放ち、わざとチャン氏の顔の近くで唾を吐いた。

幸い医療用マスクを着用していたもののその飛沫が目に入ったことを感じたという。これを受けて彼女は、自分がマスクを着けたアジア人だから他人から標的にされ、わざと菌を撒き散らかされたのだろうと語った。その後、警察に通報し念のために病院でテストも受け、本人が働く病院の医師や同僚のサポートのもと早く働きたいという意思もあるものの、数日間の休養を取っているという。

2003年にカナダに移住してきたチャン氏はこれまでも何度か人種差別的体験を受けてきたが、新型コロナウイルスとともに最近はそれが増えてきておりここまでのことはなかったという。今回の件で軽蔑と無関心さを強く感じたとともに自分の身の安全を案じたと述べた。

悲しいことにこのような人種差別は稀ではない。

例えばケベック州でも人種差別行為が相次いでいる。モントリオールに住むアジア系アダム・ギャニオン氏はスーパーで買い物中に突然男性から“ウイルスと一緒に自分の国に帰れ”と言葉による嫌がらせを受けた後、足元に唾を吐かれたという。

彼は恐怖や怒りそして驚きを感じたが、買い物を終え誰にも言わずにその場を去ったと事件後について語った。他にもスーパーの外でアジア人カップルが男性に迷惑行為の被害に合う姿がカメラに映っていたり、モントリオールのコミュニティーの象徴的な場所である「Chua Quan Am Temple」の二匹のライオン像がハンマーで破壊されるなどといったアジア人そしてアジア系コミュニティーを狙った事件が多発している。

トロントの中国系カナダ人コミュニティーの代表者らは新型コロナウイルスの感染拡大に伴い1月末に記者会見を開き、コミュニティーに向けられた差別や非難に関する問題を取り上げた。そこにはソーシャルメディアによる人種差別的な不快な投稿や市の職員による誤報などを問題視する意見も含まれた。

【合わせて読みたい】新型コロナウイルスによるアジア人差別 現代に蘇る「黄禍論」|特集「カナダの光と闇」

トロントのチャン氏はウイルスの経過をみると共に今このようなアジア人に対する人種差別行為がカナダでもあることを広く知らせたいと述べている。また、ウイルスの収束がまだ見えない中ヘイトクライムが増えることを懸念しており、もしも差別的行為を目撃した時はさらに多くの人が助けの手を伸ばすことを望んでいると語った。

本文=TORJA特派員 川田英奈