【第22回】国際離婚で子供と一緒に引っ越すには~カナダ最新情報|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

 2014年、日本は、ハーグ条約の「子供の国際的な移動(引っ越し)に関する規定」に従うことを受け入れました。これによって、例えば、カナダに住んでいた日本人が、もう一方の親の同意なく子と日本に引っ越し、もう一方の親が不服を申立てた場合、子はカナダに戻されることになります。

 これが「国際離婚しても子供と日本に引っ越すことはできない」と考えられている理由です。しかし、実はこの「一方の親が子と一緒に引っ越そうとすること」は、国際結婚に限らず、別居中の夫婦が最も多く裁判で争うケースなのです。

 そこで今回は、「別居後、子供と一緒に引っ越すには?」 についてエキスパート弁護士ケン・ネイソンズに聞いてみました。

カナダの法律の最新情報

 2021年3月、「子供が安全に豊かに育ってゆくために何が最善なのか」に関する決め事をまとめたChildren’s Law Reform Actが改正されました。子と一緒に引っ越すためのルールをステップ・バイ・ステップで紹介しましょう。

  1. 引っ越し予定日の60日前までに、引っ越し予定日、新しい住所、その他の引越しの詳細をもう一方の親に伝えましょう。
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  2. この時、もう一方の親のペレンティングの時間を確保し、子が他方の親やその家族とこれまで同様の関係を維持する方法を提案します。
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  3. この申し出に対し、もう一方の親は30日以内に回答しなければなりません。
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  4. 当事者間でその内容に同意できない場合には、交渉のプロである弁護士に依頼することになります。
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  5. 弁護士は、時にはミディエーターやペアレンティング・コーディネーターの協力を得て、当事者が共に納得出来る方法を模索します。
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  6. それでも交渉が成立しない場合には、裁判所に支援を求めます。

裁判所の判断

 裁判所は、次の6つについて検証します。

  1. 引っ越しの理由
  2. 引っ越しが子に与える影響
  3. 提案された「子がもう一方の親やその祖父母らと交流する方法」が、これまでの関わりの程度や方法に鑑みて適当か
  4. 前述の「子と一緒に引っ越すためのルール」の手順を踏んだか
  5. 引っ越しが、子供にとって精神的、経済的に有利な点は何か
  6. 提案された引っ越し先が、過去の同意書や裁判所命令によって、制限されていないか

 裁判所は、「その引っ越しが子にとって有益であるかどうか」のみを精査します。親自身の「自分と一緒にいることこそ、子にとってベストだ」という思いが、受け入れられない可能性も覚悟しましょう。

子と一緒に引っ越すための覚悟と準備

 経済的負担もまた、覚悟すべきことのひとつです。子供が両親の間を行き来するため、あるいはもう一方の親が子供に会いに来るための交通費や滞在費は、引っ越す側が負担する準備が必要です。さて、ここからが重要なポイントです。

●子供が引っ越しを希望する親と主に一緒に暮らしている場合、もう一方の親は、「その引っ越しが、子供にとって最善の利益ではない理由」を示す責任を負います。

●一方、子供が両方の親とほぼ等しい時間を過ごしている場合、引っ越しを希望する親は、「その引っ越しが、子供の最善の利益である理由」を示す責任を負います。

日本への引っ越しは不可能?

 別居後の引っ越しのハードルは高いものですが、決して不可能ではありません。
 まず、子に対する精神的、肉体的な暴力が続いていることが立証されれば、裁判所は理由にかかわらず引っ越しを許可します。

 また、別居時に引っ越しの意志を明確にしておくことも大切です。セパレーション・アグリーメントで、日本へ引っ越さないことに同意してしまえば、文字どおり、日本への引っ越しは不可能になってしまいます。

 「子供と一緒に引っ越すには」に関するご相談は、日本語でのサポートが一貫して受けられるネイソンズ、シーゲル法律事務所にお問い合わせください。次の手順でリモート相談を行っております。

hnoguchi@nathenssiegel.com (野口)宛に日本語でメール
 ↓ 
おふたりのフルネームと相談内容を明記
 ↓ 
顧客名簿を検索し、お相手が過去に当事務所の顧客でなかったことを確認後、オンライン(zoom)面談の日時決定
 ↓ 
面談の後は、メールなどで日本語での打ち合わせ

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。