COVID-19の影響:(続)カナダ大学院生アンケート調査|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

COVID-19の影響:(続)カナダ大学院生アンケート調査|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 先月号に引き続き、今回もToronto Science Policy Network(TSPN)が実施した「COVID-19 GRADUATE STUDENT SURVEY」のアンケート調査の中から私が気になった回答結果をいくつか取り上げていきたいと思います。

1.ファンディングや生活費などの経済面への懸念

 カナダの大学院生の多くは様々な奨学金や資金援助(Research Assistantships, Teaching Assistantships, and Stipends)を受けながら学業に励んでいます。53%の大学院生はCOVID-19パンデミック以前に比べ、自身の収入や資金援助への影響に不安を感じていると回答しています(表1)。また学費や賃貸などの生活費に支障が出るのでは、と感じる大学院生が増加しています。多くの研究系(Research-stream)大学院生は、ファンディング・パッケージと呼ばれる様々な資金援助を大学などから受けている場合が多いですが、このアンケート調査結果から34%の研究系大学院生は保証された資金援助を受けられないまたは受けていないという実態が分かりました。

表1

 40%の専門系(Professional- stream)大学院生はCOVID-19の影響で、夏のインターンシップなどがキャンセルまたは延期になったと回答しています。この影響は卒業や将来の就職に大いに関わる、と不安視する回答もありました。

2.大学院生の心や体についての影響

 COVID-19以前は、10%の大学院生がメンタルヘルス等の影響で長期休学を考えていると回答していましたが、パンデミック初期段階では26%の大学院生が考えると回答が増加しています。主な理由として、リモートワークの難しさ、経済面、メンタルヘルス、育児や介護などが上がりました。また、メンタルヘルスへのサポートやプライマリーケアサービスなどへの満足度がパンデミック以前よりも減少していることが分かりました(表2)。そして72%の大学院生が、パンデミック以前より心に不安または気分が落ち込んだり孤独感が増えた、と回答しています。

表2

3.リサーチ・TA・コースワークへの影響

 77%の研究系大学院生は、リサーチのために研究室等のスペースが必要であると回答しています。COVID-19への対応で大学が閉鎖された影響はそれぞれの学部・学科に所属する学生にによって違い、Physical sciences とLife sciencesでは半数の学生がラボや図書館などのスペースへのアクセスが必要であるとしていますが、HumanitiesとSocial Sciencesでは17-18%と回答しています。また、78%の大学院生はCOVID-19により、研究に必要なフィールドトリップや留学などの計画がキャンセルになったと回答しています。

 79%のTeaching Assistant(TA)やCourse Instructor(CI)として働くカナダの大学院生は、COVID-19の影響でオンライン授業に移行する業務などで勤務時間が増えたと回答しています。また、そのうちの34%は、オンラインに移行する際の様々な教育補助業務に対する学部・学科からのサポートに満足していないことが分かりました。

 74%の大学院生は、対面授業またはフィールドワークが含まれるコースを履修していますが、COVID-19の影響でそれらのコースがキャンセル(29%)または履修できるか不明(10%)になったと回答しています。また、コースワークの体系に対して大学院生からの不満の声が上がっています(表3)。主に授業やプラクティカルの質に対しての不満の割合がCOVID-19以前よりも高くなっていることが分かりました。

表3

 TSPNではこのアンケート調査結果に基づき、COVID-19パンデミック状況下で大学院生へのサポートをより良いものにするために、大学側や政府に提案していくと予定しています。