COVID-19の影響:カナダ大学院生アンケート調査|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

COVID-19の影響:カナダ大学院生アンケート調査|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 今年の4月下旬、Toronto Science Policy Network (TSPN)が初期段階でのCOVID-19パンデミックがカナダの大学院生にどのように影響を及ぼしているかというアンケート調査を実施しました。

https://toscipolicynet.wordpress.com/covid19-report/

 アンケート調査には、リモートワーク、健康状態、授業履修、リサーチ、ファンディング、その他COVID-19中での大学院生としての経験、などの項目があり、4月下旬から一か月かけて約1500人から回答を得ました。今回から次回にかけてこのアンケート結果の中から私が気になった回答結果をご報告したいと思います。

1.多くの白人女子カナダ大学院生からの回答

 全カナダ大学院生を対象にアンケート調査を行った結果、カナダ人大学院生からの回答が最も多く(83%)、そして女性(71%)白人(65%)という属性の割合が多いことが分かりました。ちなみに日本人大学院生からの回答はわずか0.1%。州別ではオンタリオ州の大学院生から52%とほぼ半分の回答が。また、分野別ではライフサイエンス(40%)、研究系博士課程(47%)から最も多く回答されました。

2.リモートワークに不安や悩み

 90%の大学院生が3月からリモートワークを始め、80%以上の大学院生はコンピューターやインターネットなど学業に必要最低限のアクセスは確保しているものの、図書館へのアクセスが出来ない(23%)、静かで落ち着いた環境がない(27%)などの懸念が分かりました。

 76%の大学院生は、大学等のロックダウンにより学業やリサーチにマイナスの影響があり、セミナーやインターンシップが行われなければ単位に響く、などという不安な声もありました。

(表1) 学部・学科別に見るCOVID-19初期段階でのリモートワークに関する大学院生への連絡やサポート

 大学院生の半分は、学部・学科や担当教授からどの様にまたどれ位リモートワークに取り組めばよいか、などのアドバイスや連絡等が無かった、またはクリアではなかった、という回答しています(表1)。

 ですが分野別に見るとライフサイエンスに所属する大学院生はたったの8%が連絡不足だったと回答したのみで、学部・学科別に違いがあることが分かりました。しかし多くの大学院生は、Qualifying Exam(博士課程研究基礎力試験)、コースワーク、Dissertation Defence(博士学位審査)や担当教授とのミーティングなどは計画通りに進んでいると回答しています。これはとても良かったと思いました。

3.半分以上の留学生が母国に帰国する予定を取りやめる

 60%の大学院留学生は、COVID-19初期段階で母国に帰国をする予定を立てたが取りやめている一方で、帰国をする計画を全くしなかった留学生は33%と回答しています。また、多くの留学生は所属する大学院からのハウジングやトラベルに関するサポートに満足をしていると回答しています(表2)。

(表2) 大学院留学生が所属する大学院からのCOVID-19に関するサポートへの満足度

 しかしながら半分以上の大学院留学生(54%)は、COVID-19パンデミックにより就学許可証が切れる前に学位を取得するための必要な科目や単位を取得できるかどうか不安だ、と回答しており、COVID-19がもたらした影響を大きく受けている結果となっています。