第6回 ティーチングアシスタント(TA)とリサーチアシスタント(RA)|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

第6回 ティーチングアシスタント(TA)とリサーチアシスタント(RA)|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 皆さんはカナダの大学院生と話をした際に「最近TAの仕事が忙しいんだ」「指導教授の元でRAやってる」など、TA/RAという単語を聞いたことがありますか?私の以前の記事を読んで初めて知ったという方もいれば、今では幾つかの日本の大学でTA制度が導入されているそうなので、TAの指導を受けた日本の大学生もいらっしゃるかもしれません。カナダの大学院生の多くは、大学院から奨学金を得たり授業料を免除される代わりにTeaching Assistant(TA)やResearch Assistant(RA)の仕事をする機会が与えられます。今回は、カナダの大学院のTA/RAの概要と私の経験したことについてご紹介したいと思います。

1.カナダの大学院のTA/RAとは

U of T HPより

 カナダの大学院には様々ある大学院生への財政支援の1つとしてTeaching AssistantshipやResearch Assistantshipがあり、大学院生は入学の条件にTA/RAの仕事をこなす義務が付いてくる場合や、入学後に応募して経済的な負担を抑えることができます。私の場合は、修士博士課程共に入学条件の1つにTA/RAの任務があったので、比較的長くTA/RAの仕事をしているかと思います。TA/RA制度は大学院生にとっては経済面での支援だけではなく、大学院生のトレーニングの機会でもあり、またTAとしての経歴は将来大学教員を目指す際へのキャリアにもなります。大学側も特に学士課程教育において大学院生のTAが非常に重要な役割を果たしています。

2.TAとしての仕事

 TAの仕事内容や役割は、授業や担当講師の方針または学部・学科によって違いますが、一般的にラボでの実験やチュートリアルなどの進行やサポート、課題や中間・期末試験の作成や採点、オフィスアワーやメールによる学生との一対一の指導、担当講師や他のTAとのミーティングなどに携わります。大学1・2年生が履修する必須科目では学生の人数が何千人となる為、クラスに合わせて複数のTAが雇用され、その中でも経験のあるTAがHead TAまたはSenior TAとなり新人TA達を指導していく立場になります。

 私が修士課程の時に初めてTAとなって担当した環境学のクラスは、やはり大人数で他にTAが3人いました。たまたまなのかTA全員がクラスメートでHead TAが不在な為に、授業担当講師がとてもきめ細かく私たち新人TA達に指導して頂きましたが、今思えば彼女はTAも教えないといけないということで、きっと大変だったんだろうなぁと思います。私自身も自分が履修している授業や研究をしながらTAの仕事をしていたので、とても大変でした。数年後、Senior TAとして働いていたときは、各コースのTAとしての仕事量が分かるようになり、また授業担当講師からの指導よりも授業をより良くするために一緒に授業内容を確認したりと、後輩TAの指導と共に一歩違った役割を担うことになりました。博士課程後半になると大学院生によってはCourse Instructor(CI)として将来の大学教育に直結するキャリアを形成する人もいます。

3.RAとしての仕事

 私の経験上、理系RAの立場としてですが、基本的に大学院入学時点でResearch Assistantshipがあると、指導教授の研究やラボのサポートをする人が多いと思います。私は指導教授の研究の中で私の研究内容に近いものを中心に手伝いました。研究室が実験系の人は実験室の運営などを任されたり、また研究室が大きいと指導教授以外のポスドク研究員などの研究の手伝いをする場合があるようです。

4.CUPE 3902の役割

 Canadian Union of Public Employeesを略してCUPEと呼ばれるカナダの労働組合の1つで、カナダの各大学ごとにLocal番号が違います。University of TorontoはCUPE 3902(以下CUPEと略す)となりTA・非常勤講師・ポスドクなどから成り立ちます。TAはCUPEのUnit 1という団体に属しCollective Agreement(労働協約)の元に大学に雇用され、仕事量や労働時間、または賃金などに関する問題はすべてCUPEを介します。

 特にTAの仕事内容と仕事量に関しては授業担当講師または学部とTA間でトラブルが起こりやすいため、CUPEはTAとして採用される数週間前にはJob Descriptionsの提示とMid-course Reviewと呼ばれる学期の中間地点で行う審査を大学側に義務付け、トラブル等を未然に防ぐ役割をしています。

 また博士課程に在籍する大学院生の雇用安定として、5年間連続してTAまたはCIとして雇用されること、最初に雇用された労働時間と同様またはそれ以上の雇用時間の確保など、CUPEは大学院生のTA/CIとしての職業の保証に取り組んでいます。CUPEはその他にも大学院生をサポートしていく為の様々な奨学金制度や、格安で充実した医療保険プランをメンバーに提供したりしています。