第3回 大学院生への手厚いサポート University of Toronto|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

第3回 大学院生への手厚いサポート University of Toronto|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 日本では4月といえば、新学年・新学期の季節ですね。カナダの大学生・大学院生にとって4月は、期末テストや課題提出などで大忙し。そして学生によっては卒業を控えたり、夏のフィールドトリップや学会への参加、インターンシップの準備など、それぞれが違った道に進む時期でもあります。今回はトロント大学を例として、研究を主体とする大学院留学生に一体どんなサポートをしているのかを、同大学大学院博士課程に在籍していた私の経験を元にご紹介したいと思います。

1.SGS International

School of Graduate Studies(U of T HPより)

 トロント大学の大学院課程School of Graduate Studies(SGS)には約1万5千名の大学院生が在籍し、留学生の割合は全体の約15%を占め毎年増加しています(2017〜18統計)。SGSでは世界中から来る留学生に対しての入学案内から卒業まで、留学生の充実した学生生活を様々な面からサポートしています。キャンパス内で提供される主なサービスやトレーニングは、Academic Support、English Language Support、Graduate Professional Skills、Financial Advising、Housing Services、Health & Wellness、Mentorship & Buddy Programs、Family Resources、Immigration Information、Transition Advisingなどがあり、トロント大学の3つのキャンパス(St. George、Mississauga、Scarborough)で同じようにサポートを受けられる仕組みになっています。次の3つのサポートは私が受けた中で、特に知識や専門性を高めることが出来た大学院生のためのプログラムです。

・Graduate Centre for Academic Communication(GCAC)

 GCACは大学院生のアカデミックライティングとスピーキング力を向上させるコースやワークショップなどを年間を通して提供しています。英語を母国語としない学生のためだけのサポートかと思われますが、研究計画書や論文の構成や書き方を学ぶコースなどは研究分野別に受講することが出来るので、ネイティブの学生にも人気のコースになっています。5〜6週間(週2時間)の短期コースですが、専任教員が学生の質問や相談に個別に応じるオフィスアワーやチュートリアルなどがしっかり設けられています。最近ではインターネットやスマホなどを一切遮断し論文作成に集中する、論文Boot Camp(ブートキャンプ)などが人気となっているようです。

・Graduate Professional Skills (GPS) Program

 GPSプログラムは大学院生のキャリア形成に必要不可欠なコミュニケーション能力や様々な実践的スキルを磨くための指導と支援を提供しています。Communication、Personal effectiveness、Teaching competence、Researchの4つの分野の中からコース、ワークショップ、セミナーなどを履修し、合計20単位を取得すると成績証明書に記載されます。ビジネスに直結するプロジェクトマネジメントやネットワークスキルを学べるものや、10 days of Twitter、Mini-MBA、Science Journalismなど、通常の授業では扱わないようなスキルを学べると好評です。

・Teaching Assistants’ Training Program(TATP)

 Teaching Assistant(略してTA)とは主として大学院生が学部の授業の助手をする代わりに学費が免除または給料として支給される北米大学機関の制度です。TATPはそういったTAに対する教育実践や能力向上のための機会を提供しています。トロント大学ではTAとして採用されると必ずTAトレーニングをTATPを通して受けなければなりません。またTATPでは将来大学教員を目指す準備として証明書付プログラムがあります。私が取得したプログラムはAdvanced University Teaching Preparation(AUTP)Programで、教育に関するワークショップ、Teaching Dossier(教育理念や業績を要約した書類)作成、教育実習、レポート提出など多岐にわたり2年間で終了しなければなりませんでした。私はこのプログラムを通して大学教員に必要な研究能力だけではなく、幅広い教育力を学ぶことができたと思っています。

2.Grad Room

Grad Room(U of T HPより)

 皆さんはHarbordとSpadinaの交差点にある「GRAD ROOM」と入口に黄色い文字で書かれた建物を見たことがありますか?Grad Roomはトロント大学院生の憩いの場で、1階はカフェが併設されており勉強やミーティングに使用され、地下には広い部屋がありGPSを含めた各種ワークショップやイベントが行われます。大学院留学生のためのアドバイザーに相談できる機会もあります。

3.Gradlife – Build Your Grad Student Experience

 Gradlifeは主に大学院生の生活が豊かになるようサポートしています。大学院生同士の交流会やキャンパス内外の各種イベント、または家族のいる大学院生へのケアなど、幅広いサービスを提供しています。また、Essential Guide for Grad Studentsという小冊子を毎年発行し新入生へのガイドブックになっています。GradlifeではFacebook、Twitter、ブログなどソーシャルメディアを使って多くの大学院生と繋がる活動もしています。特に私はGradlifeアンバサダー(修士課程の学生)が書いているブログは情報源にもなるのですが、学生時代を思い出したり共感する記事が多く、気に入っているブログの1つです。