歌手チャイルディッシュ・ガンビーノのフェスティバルで大麻吸引の話題とカナダの大麻使用者が増加傾向の分析|カナダから見るマリファナ合法化のあと

世界の大麻事情
歌手チャイルディッシュ・ガンビーノ、カリフォルニア州開催コーチェラ・フェスティバルのステージで大麻吸引

 毎年、カリフォルニア州インディオの砂漠地帯コーチェラ・ヴァレー(コロラド砂漠の一角)にて2週に渡って開催される、アメリカ最大級のミュージック・フェスティバル「コーチェラ・フェスティバル」が今年も現地時間4月12日に開催された。毎年、豪華なラインアップのアーティスト達によるパフォーマンスが注目を集めるが、今年特に話題になったのは、ヘッドライナーを務めたドナルド・グローヴァー氏によるアルター・エゴ、チャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)の圧巻のパフォーマンスだ。昨年、社会風刺的なナンバーワンヒット「This Is America」で世界中を席巻し、第61回グラミー賞で最優秀楽曲賞を受賞したドナルド・グローヴァー氏は、前例のない取り組みをするマルチな才能を持つ、時代の寵児として知られている。

 グローヴァー氏は、ウィークエンド1のライブにて、「大勢の前でパフォーマンスをする時はいつも直前に大麻を吸っているが、今夜はライブ中に吸うことにする」と宣言。ステージ上で大麻を吸引しながら、「誰か吸いたい人はいるか?」と観客に問いかけ、ファンを熱狂させ、その動画はSNS上にもシェアされ話題を呼んだ。グローヴァー氏はステージを降りると、観客達と共に大麻を回し吸いし、その瞬間は全世界にブロードキャストされ、SNS上でグローヴァー氏の行動に対する驚きと賞賛の声が挙がっていた。毎年、コーチェラの生中継を楽しみにする者は多いが、日本を含める大麻の合法化がされていない国の視聴者に対して、大麻のイメージの一新を図ったと言えるのではないだろうか。

 コーチェラ・フェスティバルが開催されたカリフォルニア州は、約20年以上前から医療用大麻が合法化されており、去年大麻全面合法化に踏み切っている大麻に寛容な場所だ。同州では、21歳以上であれば医師の処方箋がなくても嗜好・娯楽目的で大麻を売買また所有でき、1オンスまでの大麻所有、そして栽培は最大6株まで合法だ。野外で大麻を吸う者を見かけることも多く、今年10月にカナダも合法化に踏み切ると見込まれているエディブル(大麻入り食品)が夕食後のデザートに食べられていたりと、大麻はタブー視されてきていない。今回のグローヴァー氏のパフォーマンスは、そのような場だからこそできたパフォーマンスだ。コーチェラでのパフォーマンス終了後は、歌手リアーナとの共同映画『グアバ・アイランド(Guava Island)』が配信され、更なる話題を呼んだグローヴァー氏だが、彼の今後の活動にも注目である。

カナダの大麻事情
カナダ、大麻使用者数の増加、闇市場での大麻購入者数が減少

 10月17日に嗜好用大麻が合法化されてから約半年。大麻合法化によりカナダ市民による大麻への出費は去年第4四半期で合計59億カナダドルを超え、大麻はすでにカナダの経済を支える重要な一部になっており、今年長らく期待されてきた大麻入り食品の合法化に踏み切ることからも、大麻ビジネスは今注目を浴びているホットな産業だ。最新のカナダ統計局のデータによると、合法化に伴い、カナダ市民の大麻使用者の数は大幅に増加し、去年第1四半期の使用者数は累計32万7,000人だったところ今年の同期間に累計64万6,000人が大麻を使用したと述べており、前年度と比較して何と約2倍である。

 しかし、合法化直後から合法大麻の供給不足、規制の厳しさによる販売店のライセンス取得の難しさ、また合法大麻が高額であることから、本来の目的である闇市場の根絶にはまだ程遠いと懸念されていた。実際に、去年の全体の大麻売上47億カナダドルの役8割を闇市場の売上を占めている。

 しかし、今年5月のFinancial Postの報道によると一昨年と比較し、去年のカナダ国内の闇市場での大麻購入者数は13%も減少しており、闇市場依存にあった状況は改善されつつあるそうだ。最新のカナダ統計局によると、2019年の1月から3月に掛けては大麻使用者の38%が闇市場で大麻を購入しているそうで、前年度同時期のデータの51%と比較すると、少なからず減少している。また、同データによると前年度の合法大麻の使用者は 23%だったところ、今年は47%まで上がり、今年の合法大麻使用者の数は累計250万人にも登るそうだ。更に、今年初めて大麻の使用を開始した者は、闇市場で購入するのではなく、ライセンスを取得した店舗から合法に購入する傾向があるそう。合法化により、今まで闇市場での購入が普通とされてきたが、使用者の購入パターンを変えることに成功していると言えるだろう。

 ただし、長年大麻を使用してきた愛好者達の約4割は闇市場で傾向があり、またカナダ国内の大麻使用者数は増加しているものの、使用者の人口はほぼ同じままで、使用者は主に若い男性である。カナダ統計局のデータによると、カナダ市民の男性の22%が大麻を使用しており、女性は13%のため男性の方が大幅に多い。また、25歳以上のカナダ市民の全体の16%が大麻を使用しているが、15歳から24歳までの若者は約3割が使用しているため大幅に上回るそうだ。


本文=菅原万有 / 企画・編集=TORJA編集部