【第2回】国際結婚と国際離婚|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

【第2回】国際結婚と国際離婚|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

国際結婚はたいへん!?

前回お話ししたように、国際結婚に憧れる日本女性はたいへん多いのですが、一方では、「国際離婚のたいへんさ」もよく取り上げられます。日本人女性の国際結婚の離婚率は80%を超えている?という話さえありますが、国際結婚が離婚に終わりやすいというのは本当なのでしょうか。「アメリカでは二組に一組の夫婦が離婚する」と言われていますが、2012年発表のカナダ国勢調査によるとカナダの離婚率は、アメリカより少し低く40%程度のようです。これに対し日本の離婚率も平成16年の37・6%をピークにおよそ三組に一組が離婚しています。日本国内の離婚率が北米に迫る高さであることは、あまり知られていないかもしれませんね。これはどうやら「国際結婚はたいへん」なのではなく「結婚はたいへん」と捉えた方がよさそうですね。

ここでもう一つ、非公式な数字を紹介しておきます。2013年の1年間にトロント総領事館に提出された婚姻届78件に対し離婚届の提出は10件程度だったそうです。ここでの国際離婚率は約13%と冒頭の国際離婚率を大きく下回っています。ではどうして「国際結婚は離婚に終わりやすい」と考えられているのでしょうか。それは、国際離婚の「たいへんさ」が数字となって伝わっているせいではないでしょうか。離婚届の提出で終わる日本の離婚と違い、カナダの離婚はとても複雑で、離婚を決意してから離婚証明書を手に入れるまで、何年もかかる場合も珍しくありません。

メールで離婚相談?

さて、「離婚駆け込み寺」という本を書いた私のところには、たくさんの離婚相談メールが舞い込みます。メールの内容から、国際離婚に瀕する日本女性たちが求めているものが「離婚に関する法律情報」であることが伺えます。「弁護士が必要ですか」「慰謝料はもらえますか」「子供はどうなりますか」などなど、内容はどれも離婚法律に関わることなのです。弁護士ではない私が、法律に関するアドバイスをすることはできません。しかし私はこれらのお便りすべてに丁寧にお返事します。

私のお返事は、どれもオンタリオ政府のオフシャルサイトで入手できる情報なのですが、移住者女性たちにとって、そんな基本情報へのアクセスがむずかしい場合もあります。それは英語での検索が苦手であるというよりも、カナダで離婚しようとする女性が抱えるストレスや疎外感などが、必要な情報を手に入れる冷静ささえ奪ってしまうことの象徴であるように思えます。このほかにも私は、「離婚した方がよいでしょうか」には「わかりません」と「離婚しようかどうか迷ってます」には「とことん迷ってください」とお返事しています。離婚は深く考えて決意するべき重要な人生の岐路です。ですから、離婚すべきかどうかの結論を下すのは、ご自身だけですとお応えするのです。

国際離婚のピアサポート

国際結婚関連の執筆やハーグ条約と国際離婚研究を通して、15年以上も国際離婚と真正面から向き合ってきた私ですが、国際離婚女性の相互支援団体を立ち上げる原動力となったのは、トロントで暮らす女性たちの生の声でした。トロントには、国際結婚した日本人女性がたくさんいるのに、国際離婚した女性が集まれる場所は皆無に等しい。

だからインターネットで検索し藁にもすがる思いで「離婚駆け込み寺」の著者にメールする…だったらもっとオープンに国際離婚を語り合える場所があってもいいのではないか。それがピアサポートグループを始めたいと考えたきっかけでした。それは「ランダムに情報提供をするよりずっと建設的で互いに助け合えるコミュニティづくりができるのでは?」という、私自身への挑戦でもありました。

国際結婚する前に読むコラム

この連載は、国際結婚や国際離婚を考える女性のためのコラムです。このコラムを読むと、カナダで国際結婚生活を送るということが、どんな覚悟を要するものであるかがわかります。話す言葉や生まれ育った環境が違う二人の結婚には、日本人同士の結婚とは異なる努力や工夫も必要になってきます。またこのコラムを読むと、カナダで離婚するということが、どんな波乱を受け入れるものであるかがわかります。離婚制度のこと、就職のこと、子育てのこと、どれを取っても一筋縄ではいかない試練です。

日本式の「実家に帰らせていただきます」はカナダでは通用しないことは、国際結婚をしている方なら皆ご存知ですね。さらにこのコラムを読むと、カナダでの離婚後の人生に、何が待ち受けているのかがわかります。一筋縄ではいかない国際離婚をどう紐解いてゆくか、そして解いた紐を自在に結ってゆくにはどうしたらよいのかを考えることは、離婚よりさらにチャレンジングであると言ってよいでしょう。しかし同時にそれは、とても「リワーディング」なものでもあるのですよ。どうか今後の連載にご期待ください。