「トロントの社会政策と街づくりを日本に活かしたい。豊中市議選に挑戦中!」山田さほさん(後編)|Hiroの部屋

海外にいる日本人だからこそできることが絶対にある。日本も知っている、カナダも知っているという感覚を大事にしたい

東日本大震災後にトロントに留学・移住し、3人の小さなお子さんを育てる中で決断した日本帰国と豊中市議選へのチャレンジ。幼少期からの体験と成長とともに考えてきた日本社会。海外で暮らした経験を市政に活かすべく行動を起こした山田さん。働くということへのブランクはあっても、母業をしながら信念を貫き挑戦をし続けることが市議選への挑戦へのハードルを低くした。睡眠を削ってでも挑戦を続け、後悔は一度もなかったし得ることが大きいと学んだと語る。

トロントでのマイノリティーとしての子育て

ヒロ:中編では多様性の共存共栄を実現しているカナダについて感じていることを伺いましたが、母親としてトロントでの子育てを通じて政治活動に活かせるようなことはありましたか?

山田:4才の娘の同級生の女の子が学校で担任の先生に「私は将来男の子と結婚するの?」と聞いたそうなんです。すると、先生が「男でも女でも、好きな人と結婚したらいいのよ」と返事をしたようです。性の多様性への理解が幼少期の教育現場でも広く一般的になっているトロントは、日本で育った私にはびっくりすることもありますが、もし子どもの性自認がLGBTQだった時にこの地で子育てをしている限りは「大丈夫よ」と、応援してあげられる安心が親としてあると思いました。それに息子のクラスメイトの両親がママ二人だったこともあります。息子も普通の反応です。もう6歳の息子の頭の中では色々な家族のカタチがあるのが当たり前なんでしょうね。

また、さまざまな人種が共生する都市とはいえ、私はアジア人であり日本人、さらには英語の壁もあり、マイノリティーの一員でした。トロントはそんなマイノリティーである私が母であることに誇りをもち、のびのびと子育てができた場所でした。多様性を尊重する街は、子育てがしやすく、お年寄りもイキイキとしていることに気がついたのです。

究極の選択へのチャレンジの先に今がある

ヒロ:過去の対談でも話しましたが、トロントに来たときから「この街は、僕ら外国人を含めたマイノリティーたちが作っているんだ」と思っていました。そのため、僕が長年の同僚だった3人のカナダ人女性たちと一緒に起業した際も、僕だけが外国人で、僕だけ男性という事にも違和感ゼロでした。世界中からの移民が英語が完璧に話せずとも、カナダそしてトロントの第一線で活躍するのを見て、自分も努力次第でそこに行けると信じてましたね。

山田:まさに挑戦者ですね。私はコロナ禍ではユーチューブにも挑戦しました。ロックダウンの間に4作品作りました。自分が興味のある政治や社会問題のトピックを選んでから企画・シナリオ作り・校正・収録・編集と全て時間をかけて一人でやりました。仕事ではなく趣味の領域ですが、挑戦を続けるうちにもっと自分の時間が欲しいと思うようになりました。

毎日に少し余裕が生まれ自分と向き合う時間ができてから一年がすぎた頃、育児のためにインターンシップだけ残して休学していたカレッジを卒業しようと決めたのですが、その矢先に市議選に出るというチャンスが訪れました。

長い間休んでいたので今回を過ぎたらもう卒業はできないと教授に言われてしまい少し悩みましたが、市議選を選ぶことにしました。しかし卒業を諦める理由が、日本に帰って市議選に挑戦することだと教授に話すと、前例がないと面白がってくれ、市議の仕事をインターンシップにしてもいいとオファーをもらいました。なんでも話してみるものだと思いました。

ヒロ:僕にも若い頃に思い切った決断がありました。トロント1年目の学生ビザ中に元々の夢だったニューヨークの有名サロンに履歴書を持参で訪問しました。ところが某有名サロンとの話が進んだ際、僕はアメリカでの労働がビザ的に難しいと知りました。それなら直ぐにトロントで働いて、北米でのキャリアを積もうと思い、まだ約1年有効だった学生ビザを破棄し、ワーホリビザ取得のために翌週には帰国しました(*当時は日本国内からのみワーホリ申請、受諾可)。ワーホリで戻ったトロントでは、すぐに世界的に有名なヴィダルサスーンやトニーアンドガイ等のサロン勤務の話に繋がり、今の共同経営者たちともそのワーホリ時代のサロンで出会いました。全ては、あの若かれし頃の思い切った決断から始まったのだと思います。

山田:今回、この対談の機会を設けていただき、ヒロさんには感謝しています。市政の役割はそこに住む人々の声を聞き、街づくりに反映させることです。これから市政に挑戦する私からすると、ヒロさんの、現地に根ざしてビジネスを営みながら日本人のネットワークも大事にし貢献されている姿は見習うことも多いです。

(聞き手・文章構成TORJA編集部)