「プロになっても変わらないもの」プロサッカー選手・トロントFC 櫻井 功大さん(後編)|Hiroの部屋

ヒロさん(左)と櫻井さん(右)
ヒロさん(左)と櫻井さん(右)

アイビーリーグの名門校ダートマス大学を卒業し、2022年4月にMLSネクストプロのトロントFCIIに入団した櫻井功大選手。連載最終回となる今回は、プロ、そしてひとりの人間として成長し続ける彼の姿勢や今後の目標について話を伺っていく。多様な人と夢が交差するトロントで挑戦を続けるすべての人に読んでほしい。

サッカーが職業になるということ

ヒロ: 今年の春にトロントFCIIでプロサッカー選手としてデビューしたわけですが、意識面などで変化したと感じることは?

櫻井: 学生時代もサッカーに多くの時間とエネルギーを注いできましたが、職業になったことで以前よりもサッカーについて考える時間が増えたと感じています。

 プロは、自分のパフォーマンスに価値が付けられ、評価される世界です。また、サッカー選手の1日のスケジュールは短く、午前中に練習をしてその後はフリーのため、時間の使い方が重要になってきます。そのため、トレーニング方法や体のケアを色々と試してみたり、人に話を聞きに行くなど常にサッカーのことを考えるようになりました。

 ヒロさんは、プロとしてどんなことを意識していますか。

ヒロ: 健康、人としての成長、そして常にポジティブ思考を意識しています。自分が元気でハッピーな美容師でないと、お客様もハッピーにはできないと思うからです。

 もちろん美容師としての技術も大切ですが、若い頃とは違って、更に今はいかに自分のブレを減らし、安定したハイパフォーマンスを提供し続けられるかを考えています。 

明日、キャリアが終わるかもしれないからこそ今、この瞬間を懸命に

ヒロ: 今のチームの雰囲気をどう感じていますか。

櫻井: 所属しているセカンドチームは、トップチームへの昇格を目指す選手が集まるため、皆、向上心が高く、練習は、監督が止めに入るほど激しいです。僕は、この雰囲気を気に入っています。

 また、チームメイトとは、明日どうなるか分からないから、今を一生懸命にやろうという話をよくしています。サッカーは、予期せぬ怪我に見舞われることが多くあります。そのため、明日、キャリアが終わるかもしれないという覚悟を持って毎日練習に臨んでいます。

応援は力になる

ヒロ: トロントFCのサポーターの特徴や応援について教えてください。

櫻井: 特徴としては、多民族国家であるトロントを象徴するように移民系が多いと思います。また、日本と比べてサポーターとの距離が近く、感覚としてはヨーロッパの文化が根付いているように思います。そのため、サッカーに詳しく、熱を持ってチームを応援してくれるレベルの高いサポーターが多いです。彼・彼女らの存在は、僕たちにとって欠かせない存在です。そして僕たちは観客を魅了できないといけない。これは、プロとアマチュアの違いでもあると思います。この点を考えると、僕はまだまだです。これからやってやるぞ、魅了するぞという気持ちを原動力に変えて成長していきたいです。

サッカーから垣間見る人生観と多様性

ヒロ: サッカーは、世界中の人々に親しまれているスポーツである分、その土地や人で向き合い方に違いがある事も興味深いと感じます。

櫻井: トロントの多様性がサッカーにも表れていると感じます。街で40、50代の大人が本気で削り合いのサッカーをしている光景をよく目にします。肩書きを忘れ、サッカーにここまで熱くなれる人がいることに自由で素直なトロントの人々の価値観と多様性を感じました。

ヒロ: 確かに日本の大人なら怪我のリスク等を考えて、激しい接触を避ける人も多そうですよね。街ごとのサッカー話から、どこに重きを置いて生活するかなど、人生観の違いを垣間見ることができるのはサッカーの奥深さでもありますね。

プロとしてBMO Fieldに初めて立った時の一枚
プロとしてBMO Fieldに初めて立った時の一枚
目の前のことを見つめて走り続ける

ヒロ: プロとしてのスタートラインを切った今、抱いている今後の目標について教えてください。

櫻井: 短期中期的な目標は2つあります。定着してトップチームに出続けることと、怪我をしないことです。長期的な目標もありますが、まずは、短期中期的な目標の達成が必要です。

ヒロ: 目標達成のために、具体的にどんなことをしているのですか。

櫻井: 毎日、日記を書くことと自己研究をしています。前者は、その日の出来事や感情を書いています。不調な時に調子が良い時の日記を見ると、「こういう気持ちだったのか。これと同じことをしたらまた調子が良くなるんじゃないか」と過去の自分からヒントをもらうことができます。後者は、自分と同じ体格やスピードの人を見つけてその人がどうやってトップで活躍しているのかを研究しています。感覚でできるのは、天才だけで僕はそうではありません。常に学び続ける姿勢を忘れないようにしています。

一歩の勇気が人生の輪を広げていく

 
ヒロ: 最後に、トロントで夢や目標を持ってこれから挑戦する人、挑戦を続ける読者の皆さまへメッセージをお願いします。

櫻井: 僕は、13歳の時に海外へ渡りました。最初の3年は、言語も文化も異なる土地での慣れない生活にとても苦労しました。しかし、この大変な期間を乗り越えた時の達成感は大きかったですし、英語のスキルや人間力も高める事ができたと感じています。

 大変なことももちろんありますが、一歩踏み出して新しい環境に飛び込むことによって自分が見えてなかった世界が見えるようになり、人生の輪も広がってくると思います。

 トロントは、沢山の夢と人種が交差する多様性に溢れた優しい街です。あなたのその一歩を応援しています。

(聞き手・文章構成TORJA編集部)
対談はサロンを貸切にし、撮影のため一時的にマスクを外して実施しています。

櫻井功大さん

プロサッカー選手・トロントFC所属

 1999年生まれ。横浜FマリノスとトロントFC アカデミーで活躍し、トロントで高校生活を過ごし、アメリカの大学14校からスカラーシップ付きのオファーを受け、アイビーリーグ名門・ダートマス大学に入学。2021年卒業し、トロントFCに入団。大学に進学後も夏休みの期間などはトロントFCに招待され練習に参加するなど、チームへの思い入れも強い。