「多文化の中で生活する上で何が大切か気づいた時」千馬智子さん 不動産エージェント カナダ歴:16年|私のターニングポイント第23回

千馬智子さん
不動産エージェント
カナダ歴:16年

移住して4年目で新移民や難民をサポートする非営利団体で働く

 トロントに移住して今年で16年目ですが、人種のモザイクとも言われ多文化のトロントでの生活の上で、本当にいろいろな経験をしました。私のターニングポイントは、移住して4年目の時に新しく移民された方、難民の方、カウンセリングが必要な方など助けが必要な方々のサポートをする非営利団体で働き始めた時です。世界中から来たスタッフやクライアントの方々とつながれた貴重な時期でした。

 仕事内容は会計・人事部署でのアシスタント、そして提携している図書館でLibrary Settlement Workerとして新移民や難民の方のためのサポート、そしてイベントを開催していました。お互いを知る機会を提供し、調和を大切にするコミュニティーづくりを目指してカルチャーイベントなどではお互い自分の国の長所を紹介したり、料理を作る機会もありました。アジアを紹介するイベントでは、カナダにない道徳の授業を紹介しとても良い反響をもらいました。

戦争から命懸けで移民してきた男の子との出会い

 非営利団体で働いて忘れられない出来事は、革命で戦争が起き、命懸けで移民をしてきた男の子との出会いでした。挨拶も喋ることも一切しませんでした。イベントやサポートグループミーティングに参加してもらって何カ月か過ぎた頃でした。その子が初めて笑ったのです。「笑ってくれた!」私は心の中で叫びました。本当に嬉しかったです。その子の両親曰く、今までで笑ったのは初めてだったそうです。移民する前は笑いなどない、過酷な生活を強いられていたからです。スタッフもその国の事情は把握していたので、焦らずゆっくりと新しい生活に慣れるようサポートしました。笑顔になれたのは信頼してもらえたからだと思います。

人間関係が深まると思考の違いが鮮明に。
カルチャーショックに陥るときも

 非営利団体で働く前は他国の方と知り合いになるのは楽しかったですが、人間関係が深まると思考の違いが鮮明になり、カルチャーショックに陥る時もありました。お互い異なった環境で育ってきたわけですから、違いがあって当たり前です。そのことを理解していても、慣れるまでに時間が掛かりました。

 例えば、重たそうな荷物を運んでいる高齢者の方を手伝おうと声を掛けた時、それを見ていた近所の人が、毎回お願いされる事になるから手伝わないようにとアドバイスされました。自分の間違えを認めて謝った時は、裁判になったら負けを認めている事になるのですぐに謝らないよう言われたこともあります。

 全てのアドバイスや出来事が重くのしかかり、ストレスで体調を崩した時期もありました。

カルチャーショックを克服するには、文化や思考の理解のみならず、柔軟性が必要

 しかし、非営利団体で働くにつれ、文化や思考、感覚の違いを知ってあまりストレスを感じなくなりました。バス停で列に並んでいる時に、列に並ばずに一番前に行く人がいても苛立ちません。仲が良かった同僚が「私の国ではバスを待つのに列なんて作らないわよ!笑」と言っていました。その事を思い出し、きっと元同僚と同じ国の出身なのだろう、と苛立たないようにしています。

 歴史を知り、お互いの違いを理解し、自己の謙遜と相手への敬意を持ち、平和を願って暮らしていくことが多文化の中で幸せに生きていく上でとても大切な事だと思っています。

■ 現在のお仕事

 不動産エージェントとして働いています。住み心地が良い住居は生活する上でとても大切です。お客様のニーズに応え、より良い住居を探すサポートを行っています。日本人以外のお客様をサポートする際は、必ずその方の母国語であいさつするよう心掛けています。例えばイラン人の方には「サラーム!」、韓国人の方には「アンニョンハセヨ!」ロシア人の方には「ズドラーストヴィチェ!」です。ズドラーストヴィチェは分かっていただけない事が多いのですが。笑 お礼を言う時の「スパスィーバ!」(ありがとう)は、必ず通じます。たった一言ですが、お客様がパッと笑顔になり喜びます。その顔を見ると、あの時の男の子の顔を思い出します。そしてその笑顔が仕事の励みにもなっています。

■ いまの自分に点数をつけるとしたら?

80点 100点!と言いたいところですが、80点ぐらいですかね。まだまだやらなければいけない事がたくさんあります。

■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?

 自分なりに頑張ってここまで来れたので、やり直したいとは思いませんが、できなかったために後悔している事は、今行動するよう心がけています。

■ 人生で大切なことは?

 信頼と人とのつながり。若い頃は両親や人に迷惑を掛けてきた事もあります。今は信頼関係を築く事はとても大切で、信頼されるよう相手を良く知り、自分も知ってもらうよう努めています。人とのつながりも大切です。SNS上だけではなく、個人的に連絡をくださる方、つながっていたいと思ってくださっている方々に助けられています。

■ 将来の夢・ライフプラン

 現在、少しですが慈善活動をしています。今後はもう少し力を入れていきたいと思っています。本当に少しずつですが、非営利団体で働いていた経験を生かし、より住みやすいコミュニティーづくりに少しでも貢献できればと思っています。

-座右の銘: 一期一会
-好きな本: The Silenced Majority(Amy Goodman)、The Five People You Meet in Heaven(Mitch Albom)、言葉の花束(サヘル・ローズ)
-尊敬する人: 両親、夫、娘、医療従事者、先生、頑張っている人
-感謝している人と一言メッセージ: 母、全てを受け入れ、話を聞いてくださりありがとうございます
-カナダの好きなところ: 多様性があり、広大な自然があるところ